怖かったこと
ここ一週間ほど、ずっと探し物をしていた。
普段のあまり使わないものなのだが、ないと気づいた日の前日、職場でちょうどそれを使ったという記憶があった。
持ち帰った仕事をしようと家で準備しているとき、はたとそれが無いことに気づいたのだ。
まず家の中を探した。
小さいものなので、家具や積み上げられた郵便物の隙間にでも入ってやしないか、何度も探した。
そのもののイメージは、はっきりと頭に浮かんでいる。
色や形、大きさ、そして昨日使った場面まで。
これだけ探してもないということは職場に置いてきてしまったのかなと思い、翌日出勤するやいなや机の回りを探した。
全ての引き出し、いろいろな隙間、机の下まで覗き込んで探しても、ない。
通勤カバンにの中に落ちてる?
…ない。
その日来ていた服のポケット?
…ない。
私の特質上、気になって仕事中もそのことばかり考えてしまう。
数日間探し、考え続けた。
そのとき、ふと頭に浮かんだ。
「そもそも、本当に使った?」
「そんなもの、あったっけ?」
職場で、その時同時に使ったものを改めてみる。
今あるもので、全て事足りる。
ということは…
ぞっとした。
初めから、そんなもの使っていなかった。
持ち歩いてもいなかった。
私の勘違いだったのだ。
でも、それにしては物のイメージが鮮明すぎるし、場面も具体的に思い出せる。
私は、ありもしないものを作り上げ、無くしたとパニックになっていたのか…
今までに勘違いは何度もしてきたが、こんなにも信じられない事態は初めてだった。
自分の記憶がこんなにも混乱した経験はなかったので、本当に自分が怖くなった。