感情が消えた

 

ものすごく辛いことがあった。

 

でも、泣くことも怒ることも悲しむこともできなかった。

もちろん涙なんて出なかった。

 

ただ、どうしたらいいんだろう、何をすべきなんだろう、私の責任だな、と頭の中を同じことがぐるぐる回り続けるだけで、感情が外に出せなかった。

 

目の前に相手がいるので、何か言わないといけない、何か表情に出さないといけないと思いながらも、そのやり方を忘れてしまったかのように、眉毛1つ動かせず、ただ呆然としていた。

 

思えば、笑うことももうずっとしていない。

子どもからも、お母さんって笑わないね、何したら笑うの?と言われている。

 

鬱病になって、最初のころは泣いたり怒ったりをおかしなくらい繰り返していたのに、ここ数ヶ月は、まるでその反動であるかのように、感情が消えてきている。

 

思うことはあっても、それをどう出せばいいのかが分からない。

 

どうやって自分は表情を作っていたのだろうか。

どうやって相手に言葉をぶつけていたのだろうか。

そのあとどうやって気持ちを整理していたのだろうか。

その時私は何を考えていたのだろうか。

 

特に辛いことがあったときは、頭に霞がかかったようになって、ひたすら自分の頭の中だけで思考が駆けめぐる。

 

そして、自分の責任を追求する。

私に何か悪いところがあったからこうなってしまったんだ。

でもどうしたらいいのだろう。

いや、できたことはもっとあったのに、お前が手を抜いたり甘えたり油断したりしたからこうなったんだろう?

分かっているのに逃げるな。

分かっているならお前がもっときちんとしろ。

サボるな。

手を抜くな。

甘えるな。

でないと、また同じことが起こるぞ。

人に迷惑がかかるぞ。

ちゃんとやれ。

 

自分の中の、鬱病を怠けだととらえ、許さない部分が出てくる。

 

自分をいたわることも大事だ、それは逃げや甘えじゃない、そう慰めようとする部分を追い詰めてくる。

 

以前の私には、自分がこう思ったらこう!という頑固さがあった。

それは自信や強さでもあった。

それは私を守ってくれていた。

 

でも、今の私には何もない。

自分の気持ちにすら、本当にそんなこと感じているのか疑念が湧く。

そんなこと思う資格があるのか、と自分で自分を責める。

 

冷静になって考えれば、感情に資格なんているはずもない。

でも、もう今の私は、誰かに

「怒ってもいいですよ」

「泣く資格がありますよ」

「笑っても誰も責めないですよ」

「悲しんでも大丈夫ですよ」

と許可をもらわなければ何も出せない。